息子は、腕に小さな子猫を大切そうに抱いていました。
期待していた私と夫は見事に裏切られた訳ですが、でも、息子を怒る気にはなれませんでした。
小さな子猫はオスで、息子と一緒に暮らしているそうです。

息子の話によると、仕事中だった彼は階段の下にいる子猫を見つけたそうです。
少なくとも2日間、子猫はその場所にひとりぼっちでいたようだと息子は言いました。
息子は子猫を放っておけず、その日家に連れて帰ったそうです。

子猫は片方の目が炎症を起こして閉ざされていたそうです。
息子は子猫の目をそっと拭き取り、目が開くようにしました。
汚れていた子猫をお風呂に入れ、お腹いっぱいにミルクをあげました。
はじめは怯えていた子猫が、だんだん元気になってきたそうです。

玄関で子猫を抱いた息子を見たとき、ちょっと驚いてしまいました。
でも、息子がいきなり動物を連れて帰るのはこれが初めてではありませんでした。
息子は幼い頃から動物というか生き物が大好きで、鳥や猫、その他もろもろ、ものすごい数の生き物を家に連れて帰っては私たちを驚かせていました。
そしてそれぞれ彼なりに大切に育てていたのです。
子猫を見たとき、息子は変わっていないと思いました。

子猫のお世話を始めた息子は、時間ごとのミルクを与えていました。
当然、ガールフレンドとの時間を作るなど不可能な生活を送っていたようです。
当分の間、息子にガールフレンドのことを考えるヒマはなさそうでした。

私と夫の小さな落胆をよそに、息子は子猫を大事そうに抱いて嬉しそうにテキサスの自宅へ帰っていきました。
抱き上げた子猫が息子の肩に顔をのせて、当たり前のような顔をして私たちを見ていました。
『この子はぼくの手をママの手だと思っているのさ。』
そう言って帰って行った息子は、子猫の成長だけを楽しみにしていました。