子猫は大きな声で鳴き続け、網戸へ向かって歩いてきました。
放っておけば、子猫はこれからもずっと食べることすら苦労していくことになります。
私は子猫を保護しようと思いました。

子猫は網戸の中の私に気付いたのか、来た方へ戻っていきそうです。
私は子猫が逃げてしまわないように祈りながら、ウェットフードを網戸のすぐそばに置きました。
お腹を空かせた子猫はご飯の誘惑には勝てずにウェットフードの所へ戻ってきました。
子猫が食べるのに夢中になったところを見計らい、私は手を伸ばして子猫を掬い上げました。

子猫はノミに覆われていたので、すぐにお風呂に入れました。
子猫の体を洗う私の手は、子猫のからだが壊れてしまいそうに痩せていることを感じていました。
私は子猫の引き取り手を探せる時期が来るまでうちでお世話をしようと決心しました。

私は子猫をビンクスと呼ぶことにしました。
ビンクスはお風呂の後、安心したのかゆっくりとベッドで眠りました。
私は我が家の猫たちがビンクスとうまくいくにはどう紹介したらよいか考えていました。

私はその日のうちに我が家の猫の中で一番年上、16歳のニッケルにビンクスを紹介しました。
ニッケルは始めのうちこそビンクスにあまり興味を示すことはありませんでした。
失敗したかに思えたのですが、彼らはすぐに打ち解け、その後何週間もべったりと寄り添って過ごしていたのです。
・・・しかし、この時の私はその後の思わぬ展開を知る由もありませんでした。

私が最も頼りにしていたニッケルが、私の手の届かないところへ行ってしまいました。
ビンクスが我が家に来てちょうど1か月、ニッケルが旅立って行ったのです。

ニッケルは、残された私達のために、彼の子分と認めたビンクスに何もかも引き継いでいったに違いありません。
『ぼく達がいるよ。』ビンクスはニッケルの代わりにずっと私のそばで寄り添ってくれていたのです。
ニッケルを亡くした私はビンクスの存在ににどれほど助けられたか分かりません。
私にとってビンクスの存在はなくてはならないものになりました。

ビンクスが私たちの前に現れて2年が過ぎました。
ビンクスはかなりゴージャスな猫に成長しました。
彼は今でも、ニッケルの教えに従い私を守るナイトのように私に寄り添っています。
寝転がってテレビを見ている私の後ろで、一緒にテレビを見ながら警護をするビンクスがいます。

偶然とは思えませんでした。
私と長い時間を共に過ごしたニッケルは、ビンクスに伝えておきたいことすべてを残したに違いありません。
私はそう信じています。

人生には予期せぬことがいろいろ起こりますが、ときどき、とんでもない幸運を手にすることもあるのですね。
私にとって、ビンクスはまさに幸運の子猫でした。