その日は雨が降っていました。
女性は直ちに地元の動物レスキューグループAnimals Lebanonに助けを求めます。
連絡を受け取ったレスキューグループのラナ・レニ・カリルさんは現場に急行し、女性と一緒に子猫を掬い上げました。

掬い上げた子猫はラナさんたちに助けられるまでの間、長時間今にも溺れそうな状態で水に浸かっていました。
びしょ濡れの子猫は低体温症を起こして殆ど動けなくなっていたのです。

『ベイルートアメリカン大学の構内にはたくさんの野良猫が暮らしています。
哀しいことに、ここで捨てられる猫も少なくはありません。』
助けられた子猫もここで暮らす野良猫に生まれたのかもしれません。

子猫は生後約5週、しかし体重は190gほどしかありませんでした。
レスキューグループの施設に運ばれた子猫は、身体をきれいにした後、冷え切った身体を温められていました。
困ったことにその日は日曜日、動物病院は休診日のためラナさんたちは日頃からアドバイスをもらっているアメリカの獣医師に、オンラインで対処法を相談することにしました。

『オンラインで子猫の状態を見たアメリカの獣医師は、子猫をタオルでくるみお湯を詰めた瓶(湯たんぽ)を子猫のそばに置いて温め続けるようにとアドバイスをくれました。』
子猫のお世話係はアドバイスに従い、子猫を温め続けました。
子猫が栄養失調の上痩せて小柄なことから、獣医師は子猫が夜を越えられるかは分からないと言ってきたのです。
しかし、それを聞いた施設のスタッフは決して諦めようとはしませんでした。

ラナさんたちは、子猫の弱った体にも優しいキャットフードを2~3時間おきに与え続け、子猫はそれを少量ずつ食べました。
心配された夜を超えると、子猫は少しずつ元気を取り戻してきました。
2日目に入ると、子猫は食欲を徐々に取り戻し、その日の終わりには与えられたキャットフードを取られないように抱え込んで食べるようになったのです。

それまでお腹いっぱいに食べることができなかった子猫は、食べたいだけ食べることができるようになった今でも、誰かにご飯を取られないようにご飯を守っていました。
しかししばらくすると、子猫のご飯を取り上げてしまうものは誰もいないと理解したようで、ご飯を守るのを止めてしまいました。
子猫は快適な環境でお腹いっぱいのご飯を食べ、とてもリラックスして過ごす余裕を見せ始めていました。

数日後、危険な状態を脱した子猫は、レスキューグループで里親さんをしているマギー・シャラワイさんの自宅でお世話をすることになりました。
そして子猫にはジェシーと名前が付けられました。
マギーさんの家に暮らすジェシーは、始めての自分の家でよりリラックスして過ごせるようになり、体重を240gまで増やすことができました。
まだまだ平均には及びませんが、ジェシーの成長は一歩一歩前進を続けていました。

マギーさんが部屋に入ると、ジェシーは彼女の膝に乗り、喉を鳴らして甘えてくるそうです。
『私の母は、アルツハイマー症を患い昨日のことも覚えていません。
でも、ジェシーが来てからは、毎朝自分で起きてきてジェシーを探し、一度抱いたらそのまま離そうとしなくなりました。』
マギーさんの母親を夢中にさせているジェシーは、マギーさんに元気と笑顔をもたらしてくれていると言います。
すでに、里親であるマギーさんの家族に笑顔をもたらす存在となったジェシー。
きっと愛される家族のもとへ旅立つ日もそう遠くない、そう思えますね。