ガルトルードと名付けられた若い猫は、私たちに地元メキシコのプエルト・ペニャスコの通りに住む野良猫でした。
彼女は野良犬に襲われ、重傷を負った状態で女性に保護され、私たちの施設に運び込まれたのです。
ガルトルードの腹部は、野良犬の鋭い爪の一撃によって大ケガを負いとても危険な状態でした。
施設の獣医師チームは、ガルトルードに直ちに手術を施し、彼女は一命をとりとめることができたのですが、野良犬の一撃は、妊娠していたガルトルードからお腹の中の子猫の命を奪い取ってしまいました。

大ケガを負った上に、子どもを奪われたガルトルードは深い哀しみの中にいました。
しかし、彼女は身も心も最悪の状況にも拘わらず、生きることを諦めてはいませんでした。
ガルトルードは、獣医師たちが驚くほどの頑張りを見せてゆっくりとその傷を癒していきました。

私たちの施設は、カリフォルニアに拠点を置く保護団体として国境を越え相互に協力しあい動物保護の活動をしてきました。
私たちのメキシコの施設では、主に通りで暮らす野良犬の保護を中心に活動しています。

ガルトルードが保護されて1週間後、私たちの施設に3匹の衰弱した子犬が連れて来られていました。
子犬たちは病気を患い動物病院へ連れて行かれたのですが、その飼い主は引き取りを拒否したため困った病院が施設に助けを求めてきました。
3匹はとても衰弱し、少なくとも1週間の間、母犬から引き離されていたようだと言います。
医療チームの懸命の看護にも拘らず、2匹は回復することができず亡くなってしまいました。
生き残った1匹クレメンティーヌは、兄弟を失い母犬のぬくもりを求めていました。

同じ医療エリアで過ごしていたガルトルードとクレメンティーヌ。
懸命の回復を図っていたガルトルードはそこで、とても気になる存在を見つけていました。
クレメンティーヌの存在に気付いたガルトルードは、囁くような鳴き方をし始めたのです。
その様子に気付いた施設のクラウディアは、ガルトルードをクレメンティーヌのケージの前に連れて行きました。
すると・・・
クレメンティーヌに向かって囁き、様子を伺っていたガルトルードは、ケージの中に入りクレメンティーヌを抱いて毛繕いを始めたのです。
クレメンティーヌは気持ちよさそうにガルトルードに身をまかせ、そのまま彼女の腕の中で眠ってしまいました。

クラウディアは、子どもを失ったガルトルードの心の傷が癒されるためには、愛情を注ぐ相手が必要だと感じていました。
そして、母親を必要としているクレメンティーヌに興味を持ったガルトルードを見たとき、試してみる価値があると思ったのです。
そのクラウディアでさえ、2匹の結びつきは彼女の期待以上だと驚いていました。

2匹は片時も離れることを嫌がり、ガルトルードはクレメンティーヌを離すといつまでも鳴くようになりました。
クレメンティーヌもまた、ガルトルードの腕の中から離されることを嫌がったのです。
クラウディアをはじめ、施設のスタッフは2匹の間に生まれた深い絆を見て2匹を引き離すことはできないと思うようになりました。
2匹が回復し、新しい家族を見つけられる時期が来たとき、私たちは2匹を一緒に迎えてくれる引き取り手を探すことを決めました。
しかし、なかなか引き取り手が見つからないまま時間は過ぎて行きました。

私たちは、仕方なくクレメンティーヌをロサンゼルスに移すことにしました。
ガルトルードが移動に耐えられるのか、リスクが大きすぎると考えた結果でした。
しかし、何かを感じ取ったガルトルードは、クレメンティーヌから離されることを拒否し続けたため結局2匹を一緒に移すことにしました。

2017年9月。ニューヨークに住むあるご婦人が2匹に会うためにロサンゼルスの施設を訪れました。
ご婦人は実際に会った2匹にすっかり心を奪われ、その場で家族に迎えることを決心されました。

お互いに心に深い傷を負い、メキシコで出会ったガルトルードとクレメンティーヌは今、ニューヨークのご婦人のもとで幸せに暮らしています。
ご婦人は、彼女たちの絆がさらに深まっていることを感じているそうです。その様子に幸せをもらっていると話してくれました。