自宅近くの道端で痩せた子猫に出会いました。子猫は私に一生懸命何か訴えてきました。なんとなく、『ボクを助けてください。』そう懇願されていると分かりました。子猫のまっすぐな目を見ていると、無視はできないと思ったのですが・・・。自宅のことを考えるとすぐに決心することができませんでした。

私たちは、犬の保護施設を運営しています。
そうです。私たちの家は保護した犬達に溢れているのです。
そんな環境に子猫を連れて帰って、子猫が本当に救われるのか、私は不安だったのです。

連れて帰った子猫を、恐る恐る犬達に会わせてみました。
最初は警戒し、怯えた様子も見せていた子猫だったのですが・・・・
近寄ってくる犬達に、先制攻撃をかけたのは子猫の方でした。
子猫の空手チョップに、犬達はタジタジ・・・
走り寄ってくる犬には、カンフーまがいの跳び技で交わしてしまいました。
完全に子猫のペースでした。
なにより、犬達に子猫を威嚇したり、本気で攻撃しようとする者はいなかったのです。

出会いのセレモニーがひと段落して、彼らに日常が戻りました。
お腹を空かせた犬達は、自分たちの食卓に子猫を招き入れました。
・・・私が心配したことはいったい何だったのでしょう?

子猫は生後2か月、私たちは小猫をリルと呼ぶことにしました。
リルは、ありのままの自分を犬達に受け入れられ、のびのびとしていました。
犬達はそんなリルを、まるで自分たちと同じ犬の仲間のようにあっさりと受け入れ、とても可愛がってくれたのです。

リルは犬達に囲まれ、彼らにいつも見守られて成長しました。
リルは毛繕いの苦労をしたことがありません。
犬達は入れ代わり立ち代わりリルを見つけては大きな舌で丁寧なグルーミングをしました。
冬を迎えると、犬達はリルを気遣いながら雪の上で一緒に遊びました。
犬達の輪の中には、いつもリルの姿がありました。

リルは、ほかの猫と遊ぶことも勿論大好きです。
リルは施設に現れる猫に積極的に自分からアプローチして遊びを楽しんでいました。
木に登ったリルが、新たな友達を作ってきたこともありました。
ハリネズミでした。
リルには種の違いを超える何かが備わっているのでしょうか。

私たちは一緒に暮らし始めてからも、リルを家族に迎えることに慎重でした。
リルに対しての愛情を抱きつつ、しばらくは彼の新しい家族を探していました。
私たちの犬達は、殺処分される前に保護したり、高齢であったり、病気や障害を持っているために引き取り手の見つかりにくい犬達がたくさんいます。
中には虐待を受けていた辛い過去を持つ者もいます。
そんな彼らだからこそ、ひとりぼっちだったリルに何かを感じ取ったのかもしれません。
犬達とリルの間に固い絆が結ばれ、リルは施設にとってなくてはならない存在になってしまいました。
こうして私たちは、リルを保護施設の特別メンバーに加え、生涯をここで暮らしてもらうことにしたのです。