夫ははじめ、乗っていた自転車の音かと思いました。夫は自転車を降り、異常がないか確かめたのですが何も変わったことはありません。夫は辺りに何かあるのか探し始めました。すると、草むらの中に小さな子猫を見つけたのです。びしょ濡れの子猫は全く動きません。前脚を開いて虫の息でした。

夫は子猫が死んでいると思いましたが、あの音が子猫から聞こえていることに気付いたんです。夫は水たまりから子猫を掬い上げると、かぶっていた野球帽に子猫を寝かせ、気道を確保して抱き、自転車を走らせて自宅に向かいました。走っている間、夫は子猫を励ましたそうです。

停電のため家の中は暗闇に近く、ハリケーンの影響でいたるところにものが散乱していました。夫の呼びかけに私は懐中電灯をつかむと廊下に向かいました。受け取った子猫は怖いくらい冷たくて、私はタオルで子猫を拭いては乾かし、タオルにくるんで私の胸に抱いて温めました。
途中でもうだめかと思ったこともありましたが、私たちは諦めたくありませんでした。子猫を温め続けて2時間ほど経ったでしょうか。ようやく子猫が反応するようになったのです。

息を吹き返した子猫は、少しずつ動きに機敏さが戻り、ときどき鳴くようになってきました。子猫は生後4週ほどだと思いましたが、よく見ると歯と目の色が変わってしまっていました。私はウェットフードと水でおかゆを作り、子猫にあげてみました。子猫は始めは警戒していましたが、しばらくすると食べてくれました。食べ終わると、お腹がいっぱいになったことを喜んでいるようでした。

子猫の前脚は低体温症のせいで軽く曲がっていて、よろよろと歩いていました。夫はすぐに動物病院へ子猫を連れて行きました。獣医師は低体温症の他に異常はないと言ったそうです。でも、子猫は体重がわずか450gにもかかわらず、生後6~8週と推測したそうです。明らかに栄養不足、あのハリケーンを生き残ったのは奇跡でした。

私たちは小猫にカントールと名前を付けました。カントールの小さな体を心配した私たちは、栄養価の高いご飯をあげカントールはモリモリ食べてくれました。1週間が過ぎると、カントールは体重を113g増やし、エネルギーが満ちて来るようでした。カントールは普通の子猫と同じにオモチャで遊ぶようになっていました。彼は一度も後退することはありませんでした。

我が家には3匹の猫と子犬を飼ってきました。カントールはその中にすぐに溶け込んでいきました。中でも犬の兄弟とはとてもうまくやっています。カントールは、低体温症に苦しみ、生後しばらくは栄養不足という命の危険にさらされました。でも、彼は生きる意志をしっかりと持ち、度重なる困難に立ち向かう強さをもっていました。あの小さな体からは想像もつかないパワーを発揮してくれたのです。

カントールはもう、その日のご飯や寒さや雨を心配する必要はなくなりました。我が家の一員として私たちと共に一生を過ごします。
ハリケーン・イルマは私たちのフロリダにダメージを与えて行きましたが、我が家には新しい家族との出会いをもたらしました。
かなり不便な停電と、ハードな後片付けのおまけがついていましたが、ね。