子猫を保護した女性は、全く動かない子猫を死んでいるのかと思ったそうです。私は慎重に子猫の手足に触れてみました。子猫の足は固く、軽くカールしているだけでした。子猫はほとんど反応がなく、でも、わずかに鳴いたのです。

私は子猫を獣医師に連れて行きました。獣医師はレントゲンで子猫が骨折していないことを確認した上で、原因は分かりませんが、脊椎または神経の損傷が原因で四肢に麻痺が起こっていると言いました。しかし、検査の過程で子猫の足に感覚が残っていることが分かり、治る可能性が残されていると言います。

子猫を安心させるために、私は身をかがめて子猫の顔の前で指を走らせました。すると。子猫の目が私の指の動きを追いました。そして、動かない腕を必死に動かそうとしました。その指で遊びたがっていることが、子猫の全身から伝わってくるようでした。

その瞬間、私は決心していました。この子猫のお世話はとても大変になることは分かっていましたが、私のベストを尽くそうと思いました。
子猫を連れて自宅に戻った私は、夫と協力して1日に5~6回のストレッチを取り入れた基本的な理学療法を始めました。ふと思いついて、バスタオルを巻いたものを子猫の両脇に置き、身体を支えて四肢を動かしやすいようにしました。有効に思えることは、何でも試してみようと思いました。

私たちは小猫にリンカーン、通称リンキーと名前を付けました。私の指を目で追っていたリンキーは、動かない四肢にあっても、その足と腕で遊びたいとはっきりと意思表示をしていました。この偉人からもらった名前は、どんな困難にも立ち向かうリンキーにふさわしいと思いました。

リンキーは、理学療法をはじめて数日後には足の屈伸ができるようになりました。健常な子猫には小さなことですが、リンキーにとっては大きな前進です。私と夫は大喜びしました。さらに1週間が経った頃、リンキーはバスタオルの支えを借りて、短い距離をよろよろと歩くようになっていました。

リンキーは、歩き始めると遊びたいという想いが強くなっていきました。彼は小さなネズミのオモチャを気に入って、ネズミを相手に遊びながらストレッチをしているようでした。歩く、遊ぶ、さらに歩く、そして遊ぶ。リンキーは確実に前進し、ついに、自分の四肢で立ち上がることができるようになったのです。

リンキーとの出会いから5年、現在のリンキーの足は歩く、走る、飛び上がる・・・すべてを身に着けました。おねだりをするときは、私の周りを甘い声で鳴きながらついてきます。途中で床にお腹を見せて寝転がり、いわゆる猫撫で声でとどめを刺してきます。
リンキーが私の指の動きを追い、『それで遊ぶんだ!』彼がそう決めたのは正しかったのです。リンキーに残された僅かな可能性を現実にしたのは、彼の純粋な意志だったのだと思っています。