2月11日、この日マイアミで動物保護施設を運営している私たちのところへ、レイモンドがただならぬ様子で駈け込んで来ました。彼の話によると、フォートローダーデールビーチのある建設現場近くでリリーが姿を消し、それに気付いたレイモンドはあたりをくまなく探したそうです。しかし、彼はリリーを見つけることができず、警察と私たちにリリーの捜索に協力を求めにきたのでした。

レイモンドの様子は、地元でもかなりの注目を浴びていたのですが、彼がそこまで取り乱していたのには理由がありました。いなくなってしまったレイモンドの猫、ヒマラヤンキャットのリリーは、20歳という高齢に加え盲目で聴力をほとんど失っている猫でした。レイモンドが心配するのも無理はありません。警察と私たちはリリーの捜索に協力することにしました。

私たちはボランティアを含め、リリーの捜索チームを作って探し始めました。しかし、どんなに探してもリリーを見つけることはできませんでした。レイモンドはカリフォルニアへ戻らなければならず、私たちが引き続きリリーを探すことを約束したのです。レイモンドはカリフォルニアへ戻る前に、リリーとは二度と会えないかも知れない、そう言って肩を落としていました。

ところが、リリーがいなくなって2か月余りが過ぎたころ、ボランティアの女性から『リリーによく似た猫を見つけた』という連絡をFacebook上で受け取ったのです。その情報をレイモンドにつないだところ、その猫がリリーであることに間違いないと分かったのです。リリーは、彼から離れたわけではありませんでした。リリーは彼女が姿を消したあの建設現場でずっとレイモンドを待っていたのです。私たちは、女性に協力してもらいすぐにリリーの保護に急行しました。

無事に保護されたリリーでしたが、2か月余りをフロリダの暑さと雨に耐えてきた彼女は、脱水症状と肝臓に問題が見つかり、その美しい毛並みは艶を失っていました。私たちは、リリーを迎えに来るレイモンドの到着までに、地元の動物病院とチームを組んでリリーの治療にあたりました。
そして5月19日、車を飛ばしてフロリダを訪れたレイモンドは、健康を取り戻したリリーと3ヶ月ぶりの再会を果たしたのです。レイモンドが涙を流しながらリリーに声をかけると、リリーもまた私たちに見せたことのない甘い表情と頭突きを返していました。『二度とリリーを見失うことはありません。私は幸せだ』初めて会ったときのように、レイモンドは違った意味でエキサイトしていました。リリーは今、レイモンドと元の暮らしに戻って元気でいるようです。