猫は大きなバッグパックの中に、もうひとつのバッグが入っていてその中にいました。猫はその中で苦しそうにもがいていたのです。猫を発見したカップルはすぐに、地元の動物保護団体である私たちに助けを求めてきました。急行した私たちでしたが、猫の容体はとても悪く一刻を争う状態でした。

猫は頭部や骨盤をはじめ全身にケガを負い、とても痩せて衰弱しきっていました。ケガは古いものと最近のものが混在していたことから、猫は長い間誰かの虐待を受けていたと考えられました。医療スタッフたちが驚くほどの状態だった猫に、彼らは全力で治療と看護を施していました。保護された最初の夜、猫は2度、3度と非常に危険な状態に陥っていました。

しかし、医療スタッフは勿論、猫自身がまだ諦めてはいませんでした。保護されて1週間が経つと、彼は自分の足で立ち上がることができるようになりました。
彼が立ち上がって最初にしたこと。それは、看護スタッフのところに甘えに行くことでした。人間にあれほど辛い目に会わされているにもかかわらず、猫は人間に対して怯える様子は全くありませんでした。

猫の回復ぶりはほとんど奇跡的なものでした。スタッフたちは彼にドラマ『HEROES』から猫にヒロと名前を付けていました。治療や看護にあたるスタッフたちにとって、ヒロはまさに希望の象徴、ヒーローだったのです。

数週間を治療とリハビリに費やし、その間、ヒロは着実に体重も取り戻していました。頭部のケガと栄養不足のために、ほとんどなくしていた視力もほぼ完全に回復し、ヒロは骨盤の手術を受けることになりました。手術が成功しふらついていた足元がすっかり正常に戻ったとき、スタッフたちはヒロの歩く動画を撮影し何度も繰り返しては喜びに沸いていました。

ヒロは治療を続けながら、施設の養育担当のお宅に生活の場を移すことになりました。ヒロは里親さんの家で新しい家族を探す準備を始めていました。

ヒロの話を施設のSNSで知ったジェニファーさんご夫妻が、施設に何度かヒロをたずねていました。ジェニファーさんはヒロの虐待とその後の辛い治療やリハビリに心を痛め、何度も涙を流したそうです。その後、ジェニファーさんの自宅でヒロにテスト訪問を経験してもらい、確信を持った夫妻は正式にヒロを家族として迎えることにしました。

ジェニファーさんの家にはすでに2匹の猫がいましたが、ヒロは彼らとすぐに打ち解け、時間が経つと3匹の中心にいるようになっていました。
施設にいた頃のヒロは時折悪夢にうなされることがありました。『バックパックからもがいて出ようとしているみたいでした。私はヒロを起こして側にずっと寄り添っていました。』そう話すジェニファーさんの元で、最近ではその悪夢もほとんどなくなってきていました。

ヒロの過去と現在に深い理解を持ち、今後の治療にも積極的なジェニファーさんご夫妻は、常に私たちとコミュニケーションをとり誠実です。ジェニファーさんご夫妻ならヒロの未来を託せるという私たちの判断は間違っていませんでした。ヒロは、日に日にたくましさを増し、輝いています。ヒロが完全に健康を取り戻す日は、そう遠くないかもしれません。