ルパートはシェルターの育成プログラムの中で引き取り手を探している子猫でした。ルパートのケージの前に立ったとき、情報シートに書いてあったのは『生後9週・茶トラ、去勢済み・etc・・・』まぁ、大まかな情報でした。何より子猫が見詰めてくるまなざしに、私は強く心を惹かれてしまいました。

ルパートは、奇妙なことにいつも哀しそうな表情のままでした。私の家に来た頃のルパートは、とてもシャイで、自分にとって居心地がいいと判断できるまで、しばらくの間は私のことを家具の陰から覗いて見ていました。でも、ルパートが私や私の家に慣れてくるにつれ分かってきたのです。

ルパートはちょっと人見知りなところがあるだけで、内心はすごい甘えん坊だってことが。たとえ初めて会った人でも、ルパートが慣れてさえしまえば、結局はその目の前にごろんと寝転がり『撫でて!』とアピールするんです。しかも、あの哀しそうな表情でそれをやるもんだから、誰も彼の要求に逆らうことができませんでした。

あっという間にルパートは9歳になりました。彼の表情は今も変わりません。私が一目で射抜かれたルパートのあの哀しそうな眼差しは、彼の感情が表れているのではなく生まれつきのものでした。それは彼が誇る、私にとって最強に手強い武器です。

ルパートはフワフワのハンサムな猫に成長しました。私は今も彼の哀しそうなまなざしに勝つことはできません。ルパートは窓枠での昼寝と歯磨きガムが大好きで、とてもシンプルです。ですが、ルパートが私に何かをおねだりするとき、彼はあの表情の絶妙な使い方を心得ています。私が逆らえないことを彼は十分知っているのです。