動物虐待防止協会では、猫がケージを使わない生活を送っていました。そこに引き取られたバットマンも、同じ部屋でほかの猫達と暮らすようになりました。傷ついた彼の爪は回復していたのですが、彼はほかの猫からのいじめにあうようになってしまいました。そのため、バットマンは常に物陰に隠れ、身を潜めるように暮らしていたのです。そして2015年7月11日。私は子猫を引き取るつもりで動物虐待防止協会を訪れていました。

私ははじめ、隠れていたバットマンに気付いていませんでした。いつものように身を隠していたバットマンは、私が部屋の中に入り子猫とふれあっている気配に気付き、頭を突き出したのです。バットマンは勇気を出して出てきたのですが、すぐにほかの猫の攻撃を受けてしまいました。その様子を見ていた私は、いじめにあった彼に心が痛みました。私は、バットマンを我が家に連れて帰るべきだと思ったのです。

『もう誰もあなたをいじめるものはいないわ。たとえあなたが隠れるのを止めなくても、心を開かなくてもいいの。永遠にあなたは私の家族よ。』
その日のうちに手続きを済ませ、私はバットマンを自宅に連れて帰りました。
バットマンは我が家に着くまでずっと大きな声で鳴き続けていました。

バットマンは我が家に着くとすぐにベッドの下に潜り込み、そのまま3日間出てこようとはしませんでした。再び大きく変わった環境に、バットマンはパニックを起こしていたのです。
バットマンには我が家での暮らしに慣れてもらう必要がありました。毎日時間をかけ、根気よく愛情を注ぐしか方法はありませんでした。

すると、少しずつ少しずつ、バットマンの警戒心が解けていくのを感じることができました。
数か月後、バットマンは固い殻を破ってようやく心を開いてくれたのです。そう、バットマンは私の側に寄り添うことも多くなり、普通の猫と変わらない行動をとるようになっていました。

・・・と言うより、失っていた子猫らしさが一度に噴き出したかのように、無邪気でヤンチャな一面を見せてくれるようになりました。バットマンは家中を走り回り、階段を駆け上がっては駆け下り、窓に飛び上がっては近所の様子を眺め、再び階段を駆け上がったかと思ったら駆けおりてきます。

バットマンは失った前足のことなど全く気にしておらず、私さえ忘れてしまうほどでした。彼は甘えたいとき、立ち上がってアピールして来るようになりました。今のバットマンに数か月前の怯え切っていた面影は全くありません。

バットマンの大好きなもの、私の上で寝ること、バードウォッチング、日光浴、エビ。苦手なものは芝刈り機と嵐。彼の得意は『No』という言葉を理解していること・・・。バットマンの自慢を聞かれれば、私はいくらでも並べることができます。
バットマンは辛い過去に縛られるのを止め、人生を楽しむ生き方に変えたのです。そんなバットマンは私にとって誇りであり、頼もしいヒーローなのです。