私は2階建てのアパートに住んでいます。泣きながら洗濯室のドアを開けて外に出た私は、右手に子猫を見つけました。私は子猫の両目が目ヤニで固まっていたので、始めは盲目かと思いました。その日は耐えがたいほどの暑さで、子猫は暑さから逃れるためにバルコニーにいたようでした。

私はボウルに冷たい水を入れて子猫の前に置きました。子猫は少しはそれでクールダウンできたようです。『お腹がすいてないかい?』・・・言ってはみたものの私は猫のご飯など持ってはいません。冷蔵庫にあったファヒータ(薄く切った肉のメキシコ料理)を別のボウルに追加しました。子猫はファヒータをものすごい勢いでぺろりとたいらげました。『きみの名前はファヒータだな』私は子猫と初めて分かち合ったものを彼の名前にしました。

ファヒータがくしゃみをしたのに気付いた私は、動物病院へ連れて行こうと思いましたがあてがありません。友人の提案でFacebookで情報を得ました。ファヒータを運ぶためのキャリーケースを購入しに外出している間、彼は私の部屋でおとなしく待っていました。キャリーケースに入ってもらうには少々苦労しましたが、出会って間もないことなので仕方ありません。

でも、動物病院で診察を待っている間にファヒータは私に信頼を置き始めていました。獣医師の話によると、ファヒータはそれまで栄養を摂ることができずに低体重に陥り、結膜炎と上気道感染症にかかっていたために目が塞がっていたのだそうです。獣医さんに目をきれいにしてもらい、治療のために抗生物質といくつかの薬を処方されました。

その日、ファヒータ始めての経験が続き、とても疲れてしまったようでした。少しストレスを溜めてしまったようで、私が椅子に座ると膝の上に飛び上がりそのまま座りました。ファヒータの玉座はここだ!・・・そう言わんばかりに私の膝から動こうとしませんでした。

ファヒータを見下ろして『ここで暮らすかい?』そう訊ねながら私はまた涙があふれてきました。
失恋した私は心が粉々に砕けていました。そこに助けが必要なファヒータが現れ、お互いに支え合うことになりました。ファヒータは空っぽになった私の心に、愛する気持ちを詰め込んでくれたのです。