私はペット関連の会社に勤務していて、その日もある動物の診察を受けるために動物病院を訪れていました。病院の中で1匹の可愛らしい牙を持った猫が、私に向かってとても親しげに愛嬌を振りまいて来たのです。私の後ろをついて回り、どうやら私は猫に気に入られたようでした。

気になって猫のことをたずねると、猫がこの動物病院にいる意外な理由を話してくれました。猫の名前はファング、以前の飼い主によって病院へ連れて来られたそうです。しかし、それは治療のためではなく膀胱の病気にかかったファングを安楽死させてほしいというものだったそうです。

いくら飼い主の希望とはいえ、治療をすれば治る病気にも拘らず安楽死だなんて・・・病院の獣医師は飼い主に説得の余地はないと判断し、そのままファングを引き取り治療を施したそうです。なんとフアングは専用のキャットフードによる食事療法で数日後には完治できたそうです。しかし、その後の診察で左目の深刻な感染症が発覚し、残念ながら治療には手遅れの状態だったために摘出のための手術を待っているのだそうです。

とてもフレンドリーなファングに、そんな辛い事情があるなんて私はなおさらファングのことが気になってしまいました。そこで、猫が手術を待っている間、何度も病院を訪れてファングに会っていました。そしてどうしてもファングと暮らしたいと思うようになりました。そこで私は、ファングが無事目の手術を終えたとき獣医師に申し出たのです。『私はファングを家族として迎えたい』と。

獣医師は、私を信頼しファングを私の家族として送り出してくれました。我が家の家族となったファングは、左目を失っても全く以前と変わりませんでした。相変わらずフレンドリーで、私や枕に絡みつくのが大好きなのです。

ただ、飛び移ろうとしたとしたとき失敗することがありました。片目で見ることに慣れていないため、遠近感が取りづらいようでその点だけは私たち家族も気を付けてあげたいと思います。私たちと同じ部屋にいるときでさえ、ファングは目の届くところにいなければいけません。我が家での生活はまだ始まったばかり、ファングのために何がしてあげられるか、私たちもまだまだ勉強中なのです。