ある駅の人通りの多い通りの一角で、髪はボサボサ、真っ黒な顔に伸び放題のひげ、汚れた服に足元ははだしの男性がライムを売っていました。私が通り過ぎようとしたときです。彼の側に掲げられた看板の文字が目に入りました。その文面を見て、私は彼からライムを購入しました。

彼はとてもフレンドリーで礼儀正しい人でした。気になって、なぜここでライムを売っているのか話を聞きたくなりました。すると、ローン・ダムと名乗った彼は、無償でライムを提供してもらいこの場所で販売しているのだと、そして、そのお金で町に住む野良猫たちに食べさせていると言います。

ローン・ダムによると彼がはじめて野良猫と出会って以来、野良猫を見つけると食べさせているとのだそうです。彼と野良猫たちは家族なのだと言います。でも、ライムは一袋20バーツ(約65円)・・・あなたはちゃんと食べていますかと聞くと、『私は数日食べられなくても何の問題もありません。でも、猫は食べる必要があります。』そう答えたのです。

ローン・ダムに話を聞いた私は、オンラインで彼の話を紹介しました。これをきっかけに、地元のインターネット財団がローン・ダムのFacebookを立ち上げ、彼と野良猫たちの日々を掲載しました。こうして、バンコクの街角に立つローン・ダムの勇姿が世界中に広がっていきました。

すると、ローン・ダムのもとに、様々な支援が届けられるようになっりました。バンコクの人たちは、彼のライムを買いに訪れるようになり、直接猫のご飯を届ける人もありました。そして、彼自身にもいろいろな援助の物資が届けられるようになったのです。

ある人は彼の散髪を申し出、伸び放題の髪やひげをさっぱりとカットしてくれました。ある人は彼に新しい服を届けてくれました。ローンダムはそれをとても喜んでいましたが、何を一番喜んだと思いますか?そう、猫のご飯が届くと、彼は躍り上がって喜んでいたのです。これでまたたくさんの野良猫たちが救われる、それを彼は一番喜んでいるのです。

ローン・ダムは今日もバンコクの街角で、野良猫たちのために笑顔でライムを売っています。私は、彼らを外見で判断してはいけない、そう思いました。ローン・ダムはホームレスですが、とても大きな心を持っていました。ローン・ダムがあの看板をきっかけに、多くの人に知ってもらえたことをとても嬉しく思います。