連れて来られた子猫たちは、生後5週ほど、しかし体重は約170gでした。肺炎を起こし、両目は重度の感染症のために破裂寸前に腫れあがり開けることができない状態でした。彼によると母猫は生後5~6か月の若い猫だったそうです。未熟な母猫は子育てに慣れておらず、病気の子猫たちを自分ではどうすることもできなくなり、彼に託したのだろう、そう話してくれました。それ以来、母猫は姿を見せないのだそうです。

子猫たちに治療が施され、24時間体制の看護が始まりました。しかし、残念ながら2匹の子猫のうち、メスの1匹は朝を迎えることができませんでした。オスの子も予断を許さない状態が続いていましたが、彼は必死に戦っていました。3日目に入り、カート・ヌルさんが自宅での看護を申し出てくれ、彼女の自宅に移すことになりました。

子猫はプリンスと名付けられました。プリンスには時間ごとの注射と投薬が必要で、両目の状態からも目が離せませんでした。プリンスは見ることができず、肺炎のために呼吸をするだけでも大変な上に匂いをかぐことができません。それでもプリンスは小さな体で戦っていました。頻繁に施設の治療室を訪れ、カートさんは睡眠不足と戦いながら頑張ってくれたのです。

プリンスの状態は不安定で、呼吸が困難なために何度も危険な状態に陥りました。カートさんはプリンスの急変を恐れ、毎晩彼の側に寄り添っていました。彼女の家には犬が飼われています。彼女の犬はプリンスが昼寝をするときにいつも見守ってくれていたそうです。そして、数週間後、プリンスはようやく状態が安定し、目の炎症がほぼ完治するまで回復することができました。

すっかり回復したプリンスのためにカートさんは大きなキャットタワーを用意しました。元気になったプリンスはその個性を発揮し始め、活発に遊び、数回は専用の部屋を脱走しそうになったそうです。

カートさんは、プリンスの状態を見ながら少しづつ犬や猫とふれあいさせていました。若い猫カービーとプリンスはお互いをとても気に入ったようで、プリンスにとってカービーは兄のような存在になったようです。カービーはプリンスに遊びとふれ合い方を教えてくれる良きコーチでもありました。

カートさんとその家族のおかげで引き取り手を探せるまでに成長したプリンスは、2016年7月26日、新しく家族に迎え入れられることになりました。プリンスは、ポールさん夫妻の家でティリオンと名前を変え、家族の一員として暮らし始めることになったのです。

ポールさんのお宅には先輩猫のトビーがいました。トビーはティリオンを気に入り、いつも寄り添い可愛がってくれました。2匹はすぐに親友になりました。
ティリオンは母猫の願い通り、健康を取り戻し幸せに暮らしています。彼自身が決して屈せず戦った末に得たものです。しかし、それは母猫の願いを受け入れた彼に始まり、カートさんや彼女の家族たち、そしてポールさん夫妻と、たくさんの人たちに支えられたものです。そして、今のティリオンを、支えたみんながとても喜んでいるのです。