シンドバッドは、高齢の男性の家を工事のために訪れた作業員に発見され、私が働く施設へと運ばれてきました。そのときのシンドバッドは、私たちも言葉を失う悲惨な姿でした。恐らく、まったくと言っていいほど世話をしてもらえなかったために、シンドバッドの毛は伸び放題で、その毛が排泄物やごみで固まっていました。そのせいで彼は歩くこともままならない状態だったのです。私たちは早速、シンドバッドの毛を刈る作業を始めました。

毛と皮膚の境目を傷つけないように慎重に作業を進めたのですが、すべてを刈り終えるまでに数時間が必要でした。シンドバッドの身体は、およそ3kg近い毛で覆われていました。それはシンドバッドの体重と変わらない重さでした。

残念なことに、シンドバッドの右後ろ足の1本は、固まった毛のために動かすことができず萎縮していました。痩せているだけでなく、健康面にもいくつか問題を抱えていました。しかし毛を刈り、からだが軽くなったシンドバッドは、不自由な足を気にする様子もなく嬉しそうに施設の中を走っていました。それは私たちをホッとさせました。

シンドバッドには消化器系の機能の回復と、腎臓をいたわるための食事が用意されました。シンドバッドはたくさん食べてくれました。施設に来て1週間後には順調に体重が増え始め、かなり体力を付けてきていました。シンドバッドの容態が安定してきたので、彼の里親を探せる時期が来るまでの間、私の自宅で世話をすることにしました。

実は、シンドバッドが見つかったのは暗くひんやりとした地下室でした。彼が人間と家族のように暮らせるのか多少の不安もありました。しかし、我が家での暮らしをはじめて数週間。その不安を否定するように、シンドバッドは私や家族に甘えるようになりました。さらに元気が出てきたようで、家具に飛び乗るなんてことも始めましたね(笑)そんなシンドバッドを私も家族も手放せなくなり、正式に家族に迎えることにしました。シンドバッドはもう一人ではありません。我が家ではいつも、誰かの視線が彼を追っているのですから。